プロローグ

主人公は夢を見る……

世界が軋むような爆音と逃げ惑う人々

廃墟と化した赤い空に伸びた近代的なビルの間から巨大な影が現れる

それはいるはずのない伝説の生物――ドラゴン

気がつけば現実にいるはずのないモンスター達に囲まれている

そして、主人公をかばうように立ちふさがる、

髪の長い、剣を携えた少女――

目が覚めるとそこは花畑だった  夢とはまったく真逆の古めかしい光景

激しい違和感と衝撃が主人公を襲う

「俺は……いったい誰だ?」

自らに関する記憶が全く呼び起せない

記憶を覆い隠す霧を振り払うように頭を振る

茫然と顔をあげると 自分が黒い影に囲まれていることに気づく

それは――人の形をしながら

およそ人と呼べるものではなかった

恐怖で固まる身体と停止する思考

それを現実に引き戻したのは、この世のものとは思えない断末魔だった

黒い影の異形が次々と舞うように灰燼に帰していく

終焉にただ独り立っていたのは

息を飲むほどの恍惚を瞳に宿した一人の少女だった

彼女の名は『ティルフィング』

どこか夢の少女に似ていた――